機械事業部 機械生産本部のメンバー

笠井健一

Kenichi Kasai

設計担当 プロジェクトリーダー
1999年入社
工学部 機械工学科卒

西野浩明

Hiroaki Nishino

電気技術担当
2005年入社
工学部 電気電子システム工学科卒

小野明好

Akiyoshi Ono

電気技術担当
2012年入社
工学部 電気電子工学科卒

池内亨輔

Kyousuke Ikeuchi

機械技術担当
2012年入社
理工学部 機械工学科卒

クオリカプスの製剤機械の中には、カプセル製剤の質量を全数計量するCWI(カプセル質量選別機)という機種がある。カプセル製剤については世界および日本でも当然のように全数質量検査を実施するのが通例となっているが、錠剤については定期的な抜き取りでの質量検査を実施するに留まっているのが現状だ。しかし、世界の製薬業界では、医薬品は“人の命を預かる”という概念が有り、錠剤についても全数質量検査をすべきとの動向があり、クオリカプス内でも錠剤の全数質量検査ができる機械の開発機運が高まっていた。

課題が山積した供給ユニットの開発。

錠剤とカプセルの違いを端的に言えば、錠剤は五角形や六角形といったものや花形のものまで千差万別の形状があり、大きさや形などお客様によってその姿は多種多様であるという点だ。そうした複雑な形状への対応が可能となれば、錠剤のみならずハードカプセルやソフトカプセルといった規定で形状が定められている製剤への対応も可能になる。そのため、新機種の開発は、錠剤のみに特化した質量選別機ではなく、あらゆる製剤に対応できる機種を開発するコンセプトへとシフトしていった。MWIのMが“マルチ”を指すのもその所以だ。

「まずは、錠剤、ハードカプセル、ソフトカプセル全てに対応できる供給方法の確立から始めました」。開発のプロジェクトリーダーを任された笠井は、カプセル製剤質量選別機であるCWIの電気技術を担当していた西野に声をかけた。錠剤の質量を一つひとつ計量するには、大量に溜められた製剤を一錠ずつ計量器へと搬送するユニットを開発しなければならない。従来は、製剤の形状に合わせたユニット部品を一つひとつ開発するのが常であった。それを考えてみると、本プロジェクトのコンセプトであるマルチ対応、すなわち何千種類にも及ぶ錠剤の形状全てに対応できるユニットを開発するのは至難の技に思われた。西野は言う「毎日夕方ごろ、仕事が終わり一息つこうとしていると、笠井さんが新たな機構ができたから試してくれと依頼してくるんですよ(笑)」。

形状の違う錠剤を一錠ずつ搬送できるユニットを笠井が新たに試作するたびに、そのユニットを制御する方法を考え出さなければならなかった。連続回転にするのか、間欠運動にするのか、錠剤を的確に1錠ずつ搬送するために、プログラムを作ってはやり直すという繰り返しが続いた。 試行錯誤の上、笠井と西野はある画期的な搬送方法を生み出すという結論に至る。従来の剤形に合わせた穴の大きさで一錠一錠を搬送する方法ではなく、搬送ユニットにあるローラの表面上に錠剤を吸着させ、大量に溜められた錠剤を分散させることによって一錠単位での搬送を可能にするというものだった。紆余曲折の末、供給方法の方向性が定まった。

プロジェクトに2人の若手メンバーが加わった。

笠井は、確立した錠剤の供給方法に基づきスケールアップを実施し、実機サイズのデモ機の作成にとりかかった。製剤の計量器の改良を進め、様々な形状の錠剤に対応できる計量皿の開発も進めた。ここで、プロジェクトに新たなメンバーが加わった。錠剤専用の特別機を製作した経験をもつ電気の小野、そしてCWI(カプセル質量選別機)の機械担当としてノウハウを蓄積していた池内だった。実機を完成させていく過程で、2人の持つ経験はいかんなく発揮された。小野は言う「新機種の方法論はあらかた出来ていたので、決定した方針に則って電気図面等のハード設計、プログラムなどのソフト設計を進めていきました」。

小野は、西野の描いた部品や回路、プログラムの設計を読み解き、実機へと展開させた際に必要になる電気系統のハード設計、ソフト設計を実施した。少ないスペースの中で電装部品を設置できるよう工夫を施し、配線作業の容易さを確保するための検討も行った。 池内は実機の試運転や調整、動作確認を行いながら処理能力の向上に取り組んでいた。質量選別機の計量について熟知していた池内であったが、実機における計量で、ある不具合が発生していることに気がついた。「計量が誤差の範囲内に収まらない結果が出ていたのです。計量精度に問題が発生していることを直ぐにメンバー全員に伝えました」。

事は重大であった。報告を受けた笠井はプロジェクトを統括している立場として思い悩んだ。「そもそもの供給方法が間違っていたのかもしれないと自問自答したこともありました」。しかし、メンバーに引き返す時間は残されていなかった。この新機種を次回開催される展示会に出展する事がすでに決まっていたのだ。全員が意を決した。正しい計量値を得るために、想定し得る原因を全員一丸となって突き止めるという新たな戦いが始まった。

全員一丸となって取り組んだ要因潰し。

正確な計量値を得ることができない要因として、風、振動、ノイズの3つの原因が考えられた。錠剤の搬送は、搬送ユニットのローラに錠剤を真空を用いて、吸着させ、計量器へと搬送し、計量終了後の錠剤は、圧縮空気を使用して、計量器から吹いて移動させるという機構になっている。そこで発生する真空や圧縮空気で発生した風が計測皿に影響を及ぼし、計量精度に問題が発生しているのではないかと考えられた。池内は、機械側で考えられる要因を一つひとつ突き止めては潰していった。原因を解決する方法を考えては改造を施し、改造前と改造後のデータを比較して効果を確認する作業を幾度となく繰り返した。しかし、根本的な解決には至らない。池内は笠井と相談を重ね塾考した。 2人が出した結論は、風の影響が及ばないよう計量皿の部分を完全に遮断する囲いを新たに設けるというものだった。「計量皿を別の部屋のようにして、空気の回り込みを遮断するという機構にしたのですが、その方法を考え出してから、一番効果的な遮断方法とは何かを、ずっと探っていましたね」。振動については、機械内のモータやその他の動力機器を止めては一つひとつ動かしていき何が振動を引き起こしているのかを探った。結果、真空を作り出す、ブロワで発生した振動が、真空配管ダクトを経由して、機械に振動を伝搬していることがわかった。ダクトの先にあるフロアという機械の揺れが影響を及ぼしていることがわかった。ダクトと機械の接続部に入れる緩衝材や接続部分の改造など様々な方法を試し、振動を抑え込むための改造を施した。

一方で、小野はノイズ対策について頭を悩ませていた。ノイズを抑えるノイズフィルターをどの部分に付ければ良いのか試行錯誤を繰り返していた。モータなどの動力機器から発せられるノイズなのか、他の機械で発生したノイズがアースラインから回り込み影響を及ぼしているのか、想定し得る山ほどの原因を一つひとつしらみ潰しに探っていった。しかし、どうしてもノイズの発生原因を突き止めることができない。展示会への出展が押し迫った中、全員が一丸となって徹底的に要因を調べ上げた。 「これかもしれない」。小野と西野が着目したのは、直流電源をつくり出すパワーサプライと呼ばれる装置から出ている配線だった。そこにノイズフィルターを装着してみると効果が現れた。 また、試行錯誤していく中で、搭載される電気部品点数が増え、当初予定していた、余裕のある電気容量に対し、余裕がなくなっていた。ある電気部品が動作する瞬間だけ、 パワーサプライの容量不足となり、ノイズと同じような現象が発生していた。 パワーサプライを電気容量の大きいタイプに交換することで、計量精度が安定した。

3つの要因全てを解決し、MWIはついに完成した。無事、日本での展示会を終え、MWIはラスベガスでのアメリカデビューも果たす。ラスベガスでの展示会で池内はこんな面白い体験をしたという。「展示機の前で紹介していると、あるアメリカ人が禁煙補助剤を手渡してきたんですよ。“OK”と言って、その正方形の補助剤をMWIに入れてみると実際に計測できたんですね。アメリカ人も驚いていました」。アメリカでの好感触を得たMWIの次なるデビュー先はアジアだ。冒頭にも紹介した通り、錠剤の全数質量検査は海外での需要が高いと見込まれるが、笠井はこう語る。「海外でのニーズはもちろんですが、MWIを市場に投入することで日本の製薬業界にどのような影響を及ぼすのか、その効果を確認したいですね」。 日本初となる錠剤、カプセル、ソフトカプセル全ての製剤に対応した質量検査機、MWIの飛躍が今、始まろうとしている。