機械事業部 機械生産本部のメンバー

瀬尾昌宏

Masahiro Seo

設計担当 プロジェクトリーダー
2001年入社
工学部 エネルギー機械工学科卒

佐藤健

Ken Satou

電気画像担当
2000年入社
工学部 機械システム工学科卒

藤井清文

Kiyofumi Fujii

設計・調整担当
2012年入社
工学部 機械工学部卒

五十嵐勇太

Yuta Igarashi

電気制御担当
2011年入社
情報科学研究科 情報システム学 修了

錠剤やソフトカプセルに印字されている数字やアルファベット。これは識別コードとよばれ、その薬剤が何なのかを示すものだ。従来の方式はインクを用いるグラビア印刷(オフセット印刷)が中心であったが、クオリカプスは製薬メーカー、レーザメーカーとともに新たな印字方法のジャンルを確立した。それが、UVレーザマーキング装置「LIS-250D」による非接触式印刷だ。この新ジャンルの印字機はいかにして開発に至ったのか、また、「LIS-250D」が発売以来ロングセラーを続ける理由は何か、4人の技術者の物語から読み解いていく。

1時間あたり20万錠への挑戦。

それはある年の夏の暑い日のこと。後にプロジェクトリーダーを任されることになる瀬尾は、当時の上司とともに、あるレーザメーカーを訪問していた。製薬メーカーから、「錠剤の印字をレーザで行う機械をクオリカプスで製作できないか」という依頼があり、実機を見るために、レーザメーカーを訪れていたのだ。当時を振り返って瀬尾は言う「レーザは熱を加えるという認識があり、製剤に使用して本当に大丈夫なのかと疑問を抱いていました」。 実機を見て瀬尾は驚いた。瀬尾が見たUVレーザとは、酸化チタンにUVレーザを照射することで、酸素原子を離脱させチタン原子と酸素原子の比率を変化させる。この比率の変化により酸化チタンが白色からグレーに変化するというメカニズムを持つもので、瀬尾が想像していた「熱を加える方式」とは異なっていた。このUVレーザを用いれば、それまで錠剤への印刷に必要だったインクが不要になる他、より広範囲の面積に印字ができるようになり識別性が向上。誤飲を防ぐこともできると考えられた。

開発はすぐに始まった。機械の設計を瀬尾が主担当し、電気のチームが集められた。そのうちの一人が佐藤だった。「私は主に画像の処理方法を検討していました。錠剤の有り無しや外観を検査する装置、レーザ照射後の印字検査の装置がこの機械には搭載されています。それら検査装置の開発設計に携わりました」。

メンバーはまず実験機の製作にとりかかる。課題は印字速度の向上だった。瀬尾は語る「目標は1時間あたり20万錠。ですが、検証を進めた実験機では13万錠が限界でした」。 目標は遠かった。しかし、メンバーはある方法の実現を目指した。それは、錠剤を止めて印字する間欠運転ではなく、止めずに連続搬送しながら印字する方法だ。処理数を上げるにはこの難度の高い方法に挑戦するしかなかった。メンバーは苦心しながらも、なんとかこの方法を完成させようと試みた。ひたすら設計とテストを繰り返し、ようやく生産機第1号が完成。結果は吉と出た。当初の目標を上回る処理能力、1時間あたり25万錠をたたき出したのだ。その後、世界初の非接触式両面印刷機の開発にも成功。製薬業界内で「LIS」の知名度が飛躍的に高まっていった。

「日々是改善」。終わりなき機能向上。

錠剤印刷機では異例のヒット作となった「LIS」に続々と注文は入ったが、開発は初号機の完成で終わらなかった。ここで、新たな戦力がチームに加わる。電気制御担当の五十嵐と部品設計・現地調整担当の藤井だ。五十嵐は入社当時から、「LIS」の電気設計やソフトウェアの作成に携わってきたが、ある課題にぶち当たっていた。特徴検査と言われるもので、その時は割線錠への角度追従印刷を可能にする機能を付加するという試みだった。

※割線とは、錠剤を2分の1服用する際、錠剤が割れやすくなるように入れてある切れ目のこと。

錠剤は12個セットで1ラインとしてドラム上を搬送され、1秒間に約6ラインが印刷処理されていく。様々な角度で搬送されてくる錠剤に対し、その割線の角度をカメラで認識し、画像処理して角度を算出。その情報をレーザ側に伝え、角度を調整してレーザを打つ仕組みだ。

元々、錠剤をはめるポケットには大きさに若干の余裕があるため、錠剤ごとに微妙な位置変化が起き、印刷精度が低下する課題があった。その課題は、カメラで位置情報をとらえ、レーザ側に情報を伝達することで、クリアしており解決していた。しかし、割線錠となるとそれだけではない。錠剤の真ん中に線が入っているため、その溝を認識する処理も必要となる。通常の印字よりもさらに高速かつ高精度の処理が求められるのだ。 「問題は通信時間の制約でした。この装置には、錠剤を検出するシステム、UVレーザを印刷するシステム、印刷された錠剤を検査するシステムがあり、それぞれの通信を約0.15秒以内で常に更新し続けなければいけません。通信が滞ると生産を継続できないため、通信方法の検討を何度も行いました」。 五十嵐は課題解決に向け、印刷角度の精度データを解析したり、信号の安定性を確認しながら何度もトライした。「バージョンアップの際、機能の実装は当然ですが、どのようにその機能を検証するかが非常に大切です。安定性試験を何度も行って、ついに目標とする精度が出た時は嬉しかったですね」。

高い評価・ロングセラーへとつながった若手の活躍。

こうした大きなバージョンアップ以外にも、お客様からの要望は非常に多いそうだ。装置の立上から現地調整まで行う藤井も同感だと話す。「お客様の要望に合わせて自ら部品の設計も行います。また、お客様先で聞いた意見を社内に反映して次の改善につなげられるよう常に心掛けています」。 藤井はお客様がより作業しやすいよう、錠剤の状況を反映する様々なパラメータを画面表示できるよう改良を加えた、また、装置のあちこちにあった調整用のノブを前面に配置するよう改良し、お客様がモニターを見ながら調整できるよう改善を加えた。

佐藤は言う「今回のプロジェクトでは若いメンバーが常にお客様の意見を取り入れて、自らの意見も反映して、絶えず何か新しいものづくりに挑戦してくれています。このLIS-250Dがロングセラー機としてお客様にご支持いただいているのも、こうした皆の頑張りがあるからこそだと感じています」。 インクを使用しないことで、インク切れの心配もなく無人連続運転が可能。滲みやかすれ、インク飛びのような問題もなく、印字品質も高く不良品の発生率も低い。クライアントの生産性の向上はもちろん、先に述べた錠剤の識別性向上など、この「LIS-250D」の性能に死角はないかと思われるが、開発はまだまだ途上だと瀬尾は言う。「現段階ではグレーの印刷のみですが、他の色は出せないか等、まだまだ改善の余地があると考えています」。
メンバーたちの挑戦に終わりはないようだ。